秋吉台地下水系 潜水調査プロジェクト

Akiyoshidai Underwater Cave System Exploration Project

秋吉台のカルスト台地の風景

秋吉台とは?

秋吉台とは、山口県美祢市の中部・東部に広がる、日本最大のカルスト台地です。石灰岩の分布面積は約93 km²におよび、その規模は国内では他に類をみません。

秋吉台には400を超える鍾乳洞が確認されており、日本三大鍾乳洞で特別天然記念物の「秋芳洞」も所在しています。

秋吉台は東川によって東台と西台の二つの台地に区分されます。東台(狭義の秋吉台)は、1955年に国定公園(秋吉台国定公園)に指定され、1964年には特別天然記念物となりました。また、個々の洞窟も天然記念物として登録されるなど、その維持管理には細心の注意が払われています。

秋吉台の地下水系

秋吉台を構成する石灰岩は約3億4,000万年前に形成が始まり、その後、数百万前に地表へと隆起したと考えられています。
この石灰岩層が長い年月をかけて水による溶食を受けることで地下水系が形成され、現在では網の目のように地底に広がる複雑な地下水路が形成されていると考えられています。

秋吉台の地下水系は古くは1950年代から研究され、特に1980年代には多くの調査・研究がなされました。
これらの中には実際の潜水を伴う調査も含まれていましたが、当時のケーブダイビング技術や測量手法の制約により、水中の詳細な測量や体系的な調査、水中環境に対しての研究が十分に行われたとは言い切れません。

秋吉台の地下水系、地底河川が流れる
秋吉台の入り口付近の川の流れ

※ 秋芳洞の入り口付近

秋吉台の東台の地下水系の地図

東秋吉台の地下水系

東台、とりわけ秋芳洞に関する水中調査は比較的よく進んでいます。
東台の地下水系は、北部の「鹿ノ井手水系」と南部の「秋芳洞水系」の二つに大別され、それぞれの集水域は1,200ヘクタールと1,400ヘクタールと推定されています。1)

秋芳洞では陸地・水中ともに断続的に調査が行われており、その総延長は陸上部と水没部を合わせて2017年12月時点で10,700メートルに達しています。2)

このうち約30%は水没区間であり、潜水によって新たな支洞を探索する余地も残されています。
しかしながら、

  • 1970~1990年代にすでに一定程度の調査が実施されていること
  • 秋芳洞が洞窟として唯一の特別天然記念物であり、調査に際してはより繊細な経験と環境理解が必要であること

以上の点を踏まえ、本プロジェクトでは、調査事例の比較的少ない西台地下水系から着手する方針としました。

1)環境省自然環境局野生生物課, 秋吉台地下水系, 2023年3月, 2p.

2)秋吉台科学博物館, 秋芳洞調査最前線, 2017, https://karusuto.com/wp-content/uploads/2017/12/event_20171212.pdf

西秋吉台の地下水系

西台は東台と比べて地底湖の数が少なく、地下水系に関するこれまでの研究も限定的です。
一部の水中は過去に潜水された記録が確認できますが、私が調査した限りでは、水中の測量や具体的な水中実地での研究は見当たりません。

西台の地下水系は、

  • 於福別府台水文区
  • 岩永台水文区
  • 伊佐台水文区

の3つに大別されます。

このうち於福別府台水文区には西台で最大の地底湖を持つ「寺山の穴」が存在します。本プロジェクトでは、まずこの「寺山の穴」を起点として潜水調査を開始する可能性を検討しました。

「寺山の穴」周辺の地下水は、西から東へと排水されているとされ3)、この仮説が正しければ、「寺山の穴」は下流側の「白水の池」に水中で連結している可能性があると考えられます。
特に両地点の地下水位はいずれも約90メートルでほぼ同一とされ、さらに年間を通じて降雨による地下水位の変動が少ないと計測されています。3)これらの条件から、比較的大規模な地下水路で接続している可能性があり、人間が通過できる空間があることも想定し得ます。

既往研究では、この区間について「この区間には下流の瀬戸ポリエ下に埋没しているV字谷(田中・藤井、1975、藤井、1980)が示す厚東川のかつての激しい浸食作用が及んでおり、洞窟はかなりの下方拡大を行っている。しかし、現在では沖積層の堆積に伴う地下水位の上昇のためにこの下層部は水没し、直接観察することができない。」3)と述べられていますが、潜水調査を行うことで、これまで間接的に推測されてきた地下構造を直接観察できる可能性があります。

3)藤井 厚志, 西秋吉台の石灰洞, 山口ケイビング・クラブ 発足20周年記念・特集号, 1985年11月, p.24-25

西秋吉台の白水川の上流にある白水の池

※ 白水の池

秋吉台の西台の水系推測図
寺山の穴の洞窟内の地図

※ 寺山の穴の洞窟内の地図

寺山の穴の第三支洞の地底湖

※ 寺山の穴の第三支洞の地底湖(後藤聡氏撮影)

「寺山の穴」の予備調査の計画

我々は本格的な調査に先立ち、2026年2月中旬から下旬にかけて、「寺山の穴」における予備調査を計画しました。
本計画は、美祢市立秋吉台科学博物館、地権者、美祢市化財保護課など関係各所の方々と連絡・連携を取りつつ、DIVE ExplorersおよびJKUEP(Japan Karst & Underwater Exploration Project)を主宰する伊左治が主導するもので、いつもチームメンバーとして参加していただく清水淳氏や他の方々とも協働して行うものです。

「寺山の穴」は文化財であり、かつ潜水を伴う調査が想定されるため、美祢市内部での検討を経て、実施の見通しを得ることができました。

寺山の穴の地底湖に到達するには、第一支洞から第二支洞を経由して第三支洞奥部へ進む必要があります。
しかし、第二支洞には高低差や狭隘部が存在し、過去の記録ではほふく前進を要する区間も報告されています。
そのため、本プロジェクトにおける本格的な調査時には、可能であれば第二支洞を経由せずに地底湖に到達したいと考えました。

図面上では、第一支洞から水没部を介して第三支洞に接続している可能性が示唆されており、さらに水中から直接地底湖側へ抜けられる可能性も考えられます。
したがってこの確認結果は、今後の調査計画全体に大きな影響を与えるため、今回の予備調査ではその検証までを目的範囲としました。

なお、第四支洞にも水面が存在することが確認されています。
SRT(Single Rope Technique、一本のロープを用いた垂直昇降技術)が必要となりますが、計画の進捗次第では、SRT技術を有するメンバーによって第四支洞の水面確認も実施する予定です。

また、本予備調査にあたっては、大学探検部や寺山の穴に入洞経験のあるドライケイバ―の方々の陸上サポートの中で実施する予定です。

過去の調査での到達範囲

先に述べた通り、寺山の穴を含む秋吉台の洞窟は一定程度の探検・調査がなされています。

本プロジェクトを開始するにあたり、「どこまでが既に調査されているのか」「どのような方法で調査が行われてきたのか」を把握することは、今後の調査計画や成果物の報告を計画を作成するうえで不可欠であると同時に、安全管理の観点からも極めて重要であると考えました。

そのため、過去に寺山の穴を含む秋吉台の洞窟で潜水を伴う探検・調査を行ってこられた藤井厚志氏をご紹介いただき、直接お話を伺う機会を得ました。

藤井氏からは、過去にご自身が探検・測量された地図資料などをご提供いただきました。
私がこれらの貴重な資料を拝見する中で、先人の探検と研究を引き継いでいくことへの喜びとともに、私たち自身も後世に残すことのできる具体的かつ価値の高い資料を作成していく必要性を改めて実感しました。

提供いただいた地図資料を踏まえると、当初の想定通り、寺山の穴の第一支洞から水没部を介して第三支洞へと接続していることが示されています。
また、これも事前の仮説と一致する形で、第一支洞側から第三支洞の地底湖へと抜けられる通路が存在する可能性も示唆されていました。

これらの情報を踏まえ、2026年2月に実施する予備調査では、想定していた経路を実際に確認・確保するとともに、将来の本格調査に向けて、第一支洞側から第三支洞の地底湖へ到達可能かどうかを検証することを目的として少し変更を加えました。

秋吉台の寺山の穴の地底湖内および水中の地図マップ
地底湖の縦断面(冠状断)

調査視点の違いについて

藤井氏とのやり取りや資料を拝見する中で、私自身が特に興味深いと感じたのは、ケイバー(陸上洞窟)とケーブダイバー(洞窟潜水)による洞窟の水中の捉え方の違いでした。

藤井氏は、陸上洞窟探検をバックグラウンドとするケイバーであり、その延長としてケーブダイビングを行ってこられました。一方で、私(伊左治佳孝)は、洞窟潜水を主軸とするケーブダイバーとして活動しており、その中での必要性から陸上のケイビングにも取り組んでいます。

秋吉台の水中部は、これまで藤井氏を含む、ケイバーとしてのバックグラウンドを強く持つ探検者によって開拓されてきたと理解しています。そのため、既存の資料からは、「水没部を越えて陸上部へ到達する」「陸上での連続性を明らかにする」という意図が色濃く感じられます。結果として、浅部や陸上部との接続が明確になっている区間は多く存在します。

一方で、ケーブダイバーの視点では、「水中で広範囲を捜索する」「水中同士の連続性を明らかにする」という志向が強くなります。この視点の違いにより、水中のより深い部分や、陸上から離れていく方向については、これまで十分に探査されないまま残されているように見受けられました。

ただしこの差異は、過去に探検が行われた時期を踏まえると、潜水可能時間が現在よりも大幅に限られることが影響する部分も大いにあるとは思われます。

いずれにせよ本プロジェクトでは、これまでの成果を尊重しつつ、こうした視点の違いを活かすことで、秋吉台地下水系の新たな側面を明らかにしていきたいと考えています。

寺山の穴の調査開始(2026年2月13日~14日)

調査初日(2026年2月13日)

予定通り調査初日を迎え、私(伊左治佳孝)、水中カメラマンの清水淳氏、ならびに陸上でのサポートを担当いただくケイバーの後藤聡氏、村田花音氏、菊山翔平氏、北川政宗氏、さらに報道関係者の方々とともに現地へ入りました。

同行したケイバーのうち数名は寺山の穴への入洞経験がありましたが、私は今回が初めての入洞であったため、まず内部構造や環境、既存のマップに示された地底湖の位置関係などを実地で確認することとしました。

駐車位置から山道を登り約100~150メートル進むと大きな洞口が現れ、そこから洞口付近の斜面を降りることで広大なホールに到達します。

このホールは非常に大規模であり、秋吉台の母岩である秋吉石灰岩層の厚さを実感させる空間でした。私がこれまで多く潜水してきた南西諸島(沖縄本島など)の琉球層群は層厚40~100メートル程度とされますが、秋吉台の石灰岩層は1,000メートル級とも言われており、その違いは地下空間のスケールにも顕著に表れていると感じられました。

ホールを通過し、潜水を予定していた地底湖(プールA)を確認したところ、季節的要因によるものと想像される大幅な水位低下が見られ、水面まで約5メートルの高低差が生じていました。
このため、ロープ昇降を用いずに水面へアクセスすることは困難であることが判明しました。

※ 寺山の穴に向かう斜面

※ 寺山の穴の洞口

※ 寺山の穴の地底湖(プールB)の水面

この状況を踏まえ、初日は予定を変更し、比較的アクセスが容易なプールBから潜水を実施し、プールA~プールD間に対してプールB側からアクセス可能かを確認することとしました。

プールBは40年前の地図上ではプールA~プールD間に接続していないとされているもののの、ここから進入できる場合、今後の調査効率が大きく向上することが期待され、確かめる価値はあると考えました。

プールBでは明確な流れは感じられなかったものの、水底には砂利が堆積しており、過去に流水環境であったことを示唆する地形的特徴が観察されました。
また、底質の粒径は比較的粗く、準備中に巻き上げた堆積物による濁りも短時間で収束しました。

潜水準備中に測定した水温は12℃であり、事前に想定していた水温(約17℃)を大きく下回っていました。
今回は初回調査であり、陸上移動時の機動性を重視した装備であったため、バディの清水氏と協議のうえ、潜水時間を制限する方針で潜水を開始しました。

潜水開始直後、水面付近の透視度は約4~5メートルでしたが、水深を増すにつれて底質はシルト質へと変化し、視界は30~50センチメートル程度まで低下しました。

水深約13メートルまで進行したものの、通路は徐々に狭窄し行き止まりとなりました。
この水深は1986年の潜水調査時に記録された最大到達水深と一致しており、遠い昔には通路が存在した可能性はあるものの、現在では堆積物により閉塞していると判断し、無理な進行は行わず帰還しました。

調査2日目(2026年2月14日)

前日の結果を踏まえ、ケイビングロープおよび防寒用ヒートベストを持ち込み、2日目の調査を実施しました。
後藤氏ならびに他のケイバーの方々により、平坦部から地底湖水面までのロープルートが構築され、昇降作業についても全面的な支援をいただきました。

秋吉台の寺山の穴に潜水を開始する風景

※ 地底湖(プールA)の水面(後藤聡氏撮影)

また、潜水前に、当日現地にお越しいただいていた記者の方から、「奈良時代には、秋吉台の洞窟内(長登銅山)から奈良の大仏の銅を採掘していた。その総量は500トンにおよぶ。」という情報を頂きました。
現在では陸上部分の銅は取りつくしてしまっているとのことでしたが、逆に言うと水中では銅が残っている可能性もあります。
やはり実際に調査を開始すると色々な情報を頂けるもので、今後の調査によって様々なことが明らかになることが楽しみに思えました。

実際の潜水にあたっては、上部からタンクや潜水器材を水面へ降下させ、水面上で装着を行う手順としました。

地底湖到達後、器材の昇降、装着、プレダイブチェック等を含めると、潜水開始までに約40分を要しました。撤収時にも同程度の時間が必要となることを考慮すると、潜水前後を含めて長時間にわたり低水温環境下に曝露されることとなります。
探検潜水においては、潜水時間のみならず準備および撤収工程も含めた総合的な耐寒対策が不可欠であることを改めて意識するとともに、もしヒートベストを昨日から追加していなかったら潜水できていなかっただろうと考えました。

潜水を開始すると、流水の影響を受けた洞窟(flow cave)に特有の内壁がなめらかな通路が連続していて、オープンウォーターエリア(直接水面まで浮上できる位置)からひいていくラインを結ぶ場所がほとんどありません。 また、さらに通路の上下方向の変化が激しく、かつ通路の上下がクラック上に細くなっている場所もあり、ラインを結び付けずに進むとそのような場所にラインが入り込み、ライン近辺を人間が通過できなってしまう恐れもあるため、ルートの選定には非常に注意が必要でした。

秋吉台寺山の穴の大きな地底湖

※ 地底湖の水面付近(清水淳氏撮影)

水中の管状通路、流水で拡大したことを示唆する。

※ 水中の管状通路(清水淳氏撮影)

垂直に落ちていく、秋吉台の水中通路

※ 垂直に落下する通路。側面にはスカラップが観察される。(清水淳氏撮影)

ラインを結ぶポイントに難渋しながらも、水中では以下のような観察ができました。

  • 水温が昨日の地底湖と異なる(わずかに冷たい)
  • 透視度:約3~5メートル、場所によって5~7メートル
  • 底質が砂利の場所とシルトの場所がある
  • 生物が豊富で、魚類や甲殻類が観察された
  • 一部の壁面における縞状の地層構造
  • スカラップ(流水により形成されるうろこ状構造)の存在

水中で、40年前に作成されたマップにおける水中の西端に到達しましたが、マップに記載にあったそこから北に向かう通路を確認できなかったため、初期目標である第三支洞地底湖への接続を念頭に、西端から南方向へ進路を取りました。

南に進むと、水深15メートルから30メートル超へと垂直に通路が落ち込みました。
15メートル付近の横通路は鍵穴型通路(Keyhole passage)であったような気もしますが、判然としません。

この下降部の壁面には上述した縞状の地層が観察されたほか、ヨコエビ類の生息が確認できました。
内間隙水に生息する既知種とは異なる可能性もあり、今後、美祢市等と協議のうえ採集を検討する予定です。

底部からは、やや下降しながら横方向へと続く管状通路が確認されましたが、進行可能であることを確認した時点でNDLが約2分となったため、それ以上の進行は行わず帰還を開始しました。

「寺山の穴」予備調査の総括

今回の調査では、多くの環境条件が事前の想定と異なっていることが明らかとなりました。

しかしながら、こうした差異を把握することこそが予備調査の主目的であり、その観点から極めて有意義な初期調査であったと評価しています。

次回の調査では、長時間の潜水を前提とした防寒装備に加え、平滑な壁面へのライン固定を可能とする器材や、迷路状構造の客観的把握を可能とするために測量機器等の導入を検討しています。
さらに、必要に応じて生物学的・地質学的調査を目的とした研究機材の持ち込みも視野に入れ、10日から2週間程度の集中的な調査期間の設定を検討しています。

最後に、本調査は、ケイバーの方々による陸上支援があって初めて実現したものです。
サポートをいただいたケイバーの皆様、バディとして潜水を共にした清水淳氏、ならびに調査にご協力いただいた地権者の方々、美祢市立秋吉台科学博物館、美祢市関係者の皆様に、心より御礼申し上げます。

関連の報道(2026年2月13日~14日の寺山の穴 予備調査について)

次回の潜水地の選定と潜水計画

今回の潜水調査により、秋吉台の水中環境、とりわけ西台の水中の様相について、おおよその印象を把握することができました。

それを踏まえ、次段階では、一地点の深部突破を急ぐのではなく、全体の主要候補地に実際に潜水して比較検討することで、秋吉台地下水系全体を見渡したうえで優先順位を定める方針です。

過去の潜水記録や当時作成された地図、さらに秋吉台を長年研究してこられた方々からの情報をもとに、次回以降の調査候補地として以下を挙げました。

なお、一部には現時点で折衝中の場所も含まれています。

  • 寺山の穴(今回の続き)
  • 白水の池
  • 小野の湧水
  • 大番の池
  • 龍元洞

これらの水中洞窟では、水中への入り口から約250メートル以上離れた区間や、水深の深い区間のほとんどが未踏のまま残されています。

次回の調査では、今回潜水した寺山の穴を除く各洞窟については、いきなり奥部を目指すのではなく、まずは上記の候補地すべてに実際に潜水することを優先したいと考えています。

そのうえで、各地点ごとにエントリーおよびエキジット方法の確立、今後の調査計画の立案、水中環境の把握を進め、以後の調査を安全かつ円滑に進めるための基盤づくりを行う方針です。

次回の調査日程については、以下の期間を候補として検討しています。

  • 2026年4月26日~5月1日
  • 2026年5月7日~5月25日

寺山の穴の調査予定

寺山の穴については、今回と同じく地底湖(プールA)から潜水を開始し、次の事項を実施したいと考えています。

  • プールA(第一支洞)とプールD(第二支洞)の接続確認
  • 今回到達した地点のさらに南端から西へ進み、プールAと第三支洞奥の地底湖への接続可否を判断すること
  • 今回到達した地点のさらに南端から東へ進み、第四支洞側へ向かう本流と考えられる水系を調査すること
  • (スケジュールに余裕があれば)第三支洞奥の地底湖から南南西方向へ延びる、水深が深い通路の調査を行うこと
秋吉台寺山の穴の平面図

また、5月の潜水調査に先立ち、日本洞窟学会救助部会主催による寺山の穴でのレスキュー訓練が予定されており、私も運営委員として参加することとなりました。
寺山の穴で万一けがや事故が発生した際を想定した訓練として、今後の調査に大いに役立てたいと考えています。

なお、日本洞窟学会救助部会主宰のレスキュー訓練と、我々の潜水調査とは、直接一体の事業として実施されるものではありません。

白水の池

秋吉台「白水の池」の水中マップ、平面図

※ 「白水の池」の水中マップ、平面図

秋吉台「白水の池」の水中マップ、断面図

※ 「白水の池」の水中マップ、断面図

寺山の穴の下流に位置する白水の池は、前述の通り、水系として寺山の穴と接続している可能性が高く、しかも人が通過できる規模の空間で連続している可能性も考えられます。

白水の池の水は周囲の農業用水としても利用されており、厚東川へ至るまでの水系を把握することは、学術的意義に加えて、地域利用の観点からも実務的な意義を持つと考えています。

過去には藤井氏、西日本洞窟潜水研究会の方々、他大学の探検部の方々、さらにNHKの潜水班によって潜水が行われており、入口から約300メートルの範囲までは地図化されています。

一方で地図化された最終到達地点である「第四ホール」のさらに奥には未踏の通路が続いていることが示唆されているため、今回潜水を行う場合には、まず過去の到達地点までの経路にラインを張り直すことを第一目標とする予定です。

白水の池は潜水開始地点が広い池であり、潜水準備やエキジットが比較的容易です。したがって、ライン設置と全体像の把握が完了すれば、将来的には、秋吉台で初めて潜水するメンバーや、初めて組むチームメンバーがこの環境に慣れるための場所としても活用できるのではないかと考えています。

小野の湧水

小野の湧水は、秋吉台西台の小野地区にある湧水であり、水中には真下へ垂直に、水深50メートルを超えて延びる竪穴が確認されています。

1980年から1983年にかけて西日本洞窟潜水研究会によって調査・測量が行われており、図面だけを見ると、メキシコの著名な縦穴型セノーテ「ピット」を思わせる構造です。

私たちとしては、未確認の側方部の確認に加え、既調査範囲である水深51メートル以深に続く経路の有無を確認したいと考えています。

ただし、どの程度の準備が必要かは現時点では不明であり、大深度潜水はリスクも高くなります。そのため、初回は浅部の側方確認と、水深51メートル到達地点までのライン張り直しにとどめる計画です。

また、現時点では小野の湧水がどの水系に接続しているのかを私は把握できていないため、事前に確認を進め、単発の潜水で終わらない形でこの地点の調査価値を高めたいと考えています。

秋吉台「小野の湧水」の水中の地図

※ 「小野の湧水」の水中マップ

大番の池の洞窟

大番の池の洞窟の水中地図。日本人及びイギリスのケーブダイバーによって探検された。

※ 大番の池の洞窟の水中マップ、平面図

大番の池の洞窟の測量図の横断面。

※ 大番の池の洞窟の水中マップ、横断面(1992年到達地点まで)

大番の池の洞窟では、1985年から1993年にかけて、西日本洞窟潜水研究会および同会が招聘したイギリスのケーブダイバーチームによって調査・測量が行われました。

1986年には、洞口から約150メートル先の水中を進んだ地点にあるエアドームへ到達し、1993年には招聘されたイギリスのケーブダイバーチームがその地点を突破して、さらに約200メートル先まで前進したと記録されています。
その最奥部では、崖状に水深が27メートルまで落ち込む地点で引き返したとされており、記録には「水深27メートルまで潜水したが、水底を確認できなかった」旨が記されています。これは、さらに奥へ通路が続いている可能性を示唆するものです。

現時点では、大番の池がどの水系に属するのかについて私は把握できていないため、この点も事前に確認したうえで調査計画を立てる方針です。

龍元洞(鹿ノ井手 上の穴)

龍元洞の構造や成り立ち、水中部の状況については、西日本洞窟潜水研究会『龍元洞調査報告書』(1992年3月)に詳細にまとめられています。

その記載を参考にすると、探検的観点から見た龍元洞の構造は、おおむね以下のように整理できます。

龍元洞の測量図
  • 洞口:
    • 半水没~完全水没
  • サンプ部(水没部)
    • 洞口から50~100メートル。
    • 水没範囲は季節によって変動する。
  • 下流滞水部
    • サンプ部を越えて70メートル。
    • 範囲は季節によって変動する。
    • 峡谷型の半水没通路で、水面を泳いで前進可能。
    • 幅2~3メートル、天井高2~3メートル、水深数メートルで、奥に向かうにつれて浅くなる。
  • 下流区画
    • 下流滞水部を越えて200~250メートル。
    • 峡谷型の半水没した通路で、水深は数十センチ程度となり、泳いでの前進は困難。
    • 下流滞水部よりも天井が高く、天井高4~8メートル程度の地点が多い。
  • 中流区画
    • 下流区画を越えて600~650メートル。
    • 峡谷型よりも側方に拡大した形状を持つ。
    • 水深は数10センチメートル程度で泳いでの前進はできない。
  • 上流区画
    • 中流区画を越えて200メートル、以降は未調査。
    • 100メートルほど進んだあたりから水位が深くなりプールとなるため、泳いで前進する要がある。
    • プールを100メートル程前進した地点から完全に水没する
    • 水没地点付近に、上方に伸びる支洞が発見されており、地表まで支洞が貫通していた場合はこの地点から進入することができるかもしれない。
    • 今後の探検のスタート地点となる。

すなわち、未調査部を探検するためには、まず50~100メートル程度のケーブダイビングを実施したうえで、その先へタンクを含む潜水器材を1キロメートル以上運搬する必要があるということです。

極めて大がかりな準備を要する探検・調査となることは明らかですが、龍元洞は文化遺産である大正洞と水系的につながっていることが染料調査によって既に確認されています。

仮に潜水によって大正洞との物理的接続に成功すれば、その総延長は4キロメートルを超え、日本でも有数の大洞窟となる可能性があります。探検対象として非常に魅力的な地点だともいえます。

次回の調査についてのまとめ

以上のように、秋吉台の地下水系調査は、一つの洞窟を深く掘り下げるだけではなく、複数地点の関係性を把握しながら全体像を組み上げていく作業になると考えています。次回の調査では、そのための基礎情報を集中的に蓄積していく方針です。

秋吉台の調査への想い

秋吉台は日本を代表するカルスト地域であり、60年以上にわたって水中調査がなされてきました。

先人たちの研究と探査の積み重ねを引き継ぎつつ、最新の潜水技術と調査手法によって全体像の解明に挑めることは、大きな意義と責任を伴う挑戦だと考えています。

秋吉台の調査を開始して以来、過去に秋吉台で潜水を行ってこられた複数の先達の方々からご連絡をいただきました。
そしてその皆様が一様に「自分たちで途絶えてしまうと思っていた秋吉台の水中探検が、再び進められることが嬉しい」と語ってくださったことが、強く印象に残っています。

その期待に応えたいと思うと同時にに、「秋吉台は自分のフィールドだから触れてほしくない」と考えるのではなく、探検が進むことそのものを喜ぶ姿勢は、私自身も自戒を込めて見習うべきものだと感じました。

2026年2月の成果を踏まえ、今後は段階的に調査範囲を拡大し、秋吉台地下水系の全容解明に向けて取り組む所存です。

加えて、秋吉台は多くの学術研究の舞台でもあり、その地下水系の解明・研究に寄与することは、水中探検家としての本懐でもあります。

得られた成果物やデータは、美祢市立秋吉台科学博物館や日本洞窟学会での発表とともに、秋吉台に関わる研究者の方々と共有することで引き続く調査・研究に寄与していく予定です。
また、私個人としても日本洞窟学会の『ケイビングジャーナル』等にへの寄稿などを通じて活動内容や成果を報告し、将来の追加調査や研究の深化に役立てていく所存です。これらの取り組みが、本プロジェクトにご協力いただいた方々への一つの恩返しになると考えています。

Special Thanks for This Project(A→Z)/ご協力いただいた方々

※ 所属は更新されていない場合があります。

秋吉台の方々

  • 美祢市立秋吉台科学博物館の方々
  • 地権者の方々

研究者の方々

  • Yoshiro ISHIHARA(石原 与四郎:福岡大学/日本洞窟学会)

ケイバーの方々

  • Atsushi FUJII(藤井 厚志)
  • Satoshi GOTO(後藤 聡:東京スペレオクラブ/日本洞窟学会)

Members for This Project(A→Z)

※ 所属は更新されていない場合があります。

Underwater Exploration ⁄ Documentation

  • Yoshitaka ISAJI(伊左治 佳孝:DIVE Explorers/日本洞窟学会 潜水部会長)

Organize

  • Yoshitaka ISAJI(伊左治 佳孝:DIVE Explorers/日本洞窟学会 潜水部会長)

Previous Participants(A→Z)

※ 所属は更新されていない場合があります。

Filming ⁄ Documentation

  • Jun SHIMIZU(清水 淳:マリーンプロダクト/日本洞窟学会)

Caving Support

  • Masamune KITAGAWA(北川 政宗:広島大学探検部)
  • Kanon MURATA(村田 花音:東京スぺレオクラブ/明治大学地底研究部)
  • Satoshi GOTO(後藤 聡:東京スペレオクラブ/日本洞窟学会)
  • Shohei KIKUYAMA(菊山 翔平:広島大学探検部)