Exploration DAYS

~テクニカルダイビングと水中探検の日々~

12.11

ケーブサーベイトレーニングのレポート~水中洞窟の潜水調査と測量~

潜水調査のイメージ

水中洞窟の調査と測量のコースを受講

今回はGUEというダイビング指導団体の、Cave Sidemount(ケーブ サイドマウント)というコースと、Underwater Cave Survey(ケーブ サーベイ/水中洞窟調査・潜水調査)というコースをメキシコで受講してきたので、まずこの投稿ではUnderwater Cave Surveyコースについてレポートしたいと思う。

GUEは「Global Underwater Explorers」の略で、他の指導団体とは成り立ちが異なり、PADIなどのような「教育機関」として発祥したのではなく、「探検チームの参加員をトレーニングする/ふるいにかける」という趣旨で設立されている。

したがって、“いかにして活動時間や探検の領域を拡張するか”や、“チームのメンバーが急遽入れ替わっても同じように活動できるか”などに主眼が置かれており、窮屈な面もあるが学ぶことも極めて多いと思っている。

で、その探検チーム発祥であるGUEであるからして、その団体が行う潜水調査のレクチャーは非常に役立つ/興味深いものではないかと思って今回の参加に至った

なお、私は2023年現在、GUEインストラクターではないが、Tech2とCave2という、他団体で言うところのフルトライミックスダイバーとフルケーブダイバー&ステージケーブダイバーのような認定を持っている。
(そのうちインストラクターも取るかもしれない・・・。)

コースを受講した背景

すでに日本で潜水調査は行っているにもかかわらず今回このコースを受講した動機は、

1.探検した水中洞窟のマップを作るにあたって、きちんと標準化された手法や調査の手順があるのであれば習得したい
→ どうしてもこれまで自己流/属人的になっていた部分を標準化したい

2.そもそも、世界的にはマップがなければ水中洞窟の発見者や開拓者とは認められない(洞窟のエビデンスが無い)/マップ作成者が開拓者とされる
→ 日本で、“誰がこの洞窟に最初に入った”、“誰が開拓者だ”、というようなところでよく揉めているので・・・。

というところだ。

あと、洞窟「調査」と言ったとき、調査なのであればオフィシャルに提出できる一定の成果物を出して、そこで初めて「調査」なのでは、と思ったり。

GUE Underwater Cave Surveyコースの内容

実際のUnderwater Cave Survey(水中洞窟調査/測量)コースの内容としては、
1.マップの作成意義
2.Stick Map(ケーブラインだけが書かれた地図)の作成方法と、作成に必要な水中情報
3.ケーブマップの作成方法と、作成に必要な水中情報
4.水中情報を収集する手順
5.取得した情報の集約方法
6.マップ作成や情報の収集で考慮すべき事項やTips
といったところで、5日間で行われた。

私は常々、“ただのケーブダイビングは暇だ”と公言していて、何かしらの目的が無いケーブダイビングはしないのだが、その「目的」というところで今回は非常に得るものが多く楽しいダイビングであった。

Stick Mapの作成

まず初日にはStick Mapの作成方法を確認し、実際に水中で必要情報を収集した。
※ 私はこのStick Mapまでしか作成した経験が無かった。

深度計とコンパス、1m尺の紐を使い、ラインを結んだ位置の深度、ライン間の角度や紐を測定し、ウェットノートにデータを集積していく。
(※ MNemoという自動計測機もあるが、見たところ、信頼度は一定のレベルといったところに思えた。)

StickMapを作成するにあたって必要なデータ

もちろん、データを集めながらも残圧の管理や深度管理、ケーブ内のナビゲーションも行わなければならず、アウェアネスの高いレベルが求められる作業だ。

Stick Mapだけでも自分やチームが潜るだけでは十分ではあるが、Stick Mapには洞窟の広がりや地形といった要素はなく、他に公開するためのマップではない。

ケーブマップの作成

Stick Mapが完成したら、次に各ラインを結んだ位置(ステーションという。)から、左右の壁までの距離、天井までの距離、地面までの距離のデータを収集する。
今回は水中用のソナーと巻き尺を使って四方の距離を収集した。

スティックマップに上下左右の空間の距離を追記したもの

なお、今回はレクチャーのためStick Mapができてからこちらの作業に移ったが、慣れればここまで一回のダイビングで同時に作業ができそうだ。

データ収集が終わったら各情報をケーブマッピングソフトに入力し、およその構造が作れたら、今度はライン以外の位置の壁の概略や、鍾乳石などの地形の情報を収集する段階へうつる。

地形を書き込むために、これまで集めた情報から作成した概略図を防水紙に印刷し、水中に持ち込む。

https://tech-diving.jp/wp-content/uploads/2023/12/3-4-scaled.jpg
※ 本BLOG記事用に書き起こしたもので、実際には防水紙を使用します。

先の段階でラインの壁との距離は把握しているので、壁の点と点を結ぶように水中で壁を書き込み、壁との間に地形を入れていく。

水中洞窟の地図のドラフト

これでこのエリアの地図は完成となる。

ケーブマップの完成

上記の手順で各エリアのマップを作り、それらを重ね合わせて1枚の大きな地図にする。
今回はトレースペーパーを使って手作業で完成させた。

ここで強く注意されたのは、作成したマップを公開するときは必ず©マークをつけること。
また、元データをデータ化し、タイムスタンプを取得すること(作成した日時の保全)。
その他にも、作成日や作成者を担保するいくつかのTipsを言っていただいた。

やっぱりこの辺は苦労するんだな・・・と。盗用されそうですね。

下記が今回完成させた地図だ。

完成した水中地図

※正確には、ここから作成者や日付、構成要素の説明などを入れる。

狭いエリアの地図ではあるが、これまで自分で作成していた地図よりクオリティが格段に上がり、今後自分がこのクオリティで作成すれば公的機関に提出するレポートに付けても問題ないものになったと思う。

今回は今後の調査に非常に活かせるレクチャーであった。
ただ問題は、一緒に行けるチームメイトなんだよね、という話は・・・。

再来年ぐらいには、日本でUnderwater Cave Surveyのクラスを開催できたらよいなとも思ったり。