テクニカルダイビング講習をすると、一定数、残圧残し過ぎじゃない?みたいな表情になるゲストさんがおられる。
ガス計算をした結果、残圧150程度で引き返せとなると、これまでの経験から感覚的・直感的に残し過ぎだと思ってしまう。
これは結構重大な問題で、ここを納得していないと、結局ガス計画を守らなくなる。
「なんとなく」ガスを残し過ぎの気がして、特に根拠なく+10bar、+20barと延長してしまう。
で、水中で何もトラブルが起きなければそれでも支障が出ないので、なんや!いけるやん!教科書的にはこうってだけだね!みたいになる。
このガスマネージメントをどうやって納得してもらうかはずっと課題感があった。
で、自分の中では結論が出た。
本当に緊急事態を体験してもらうしかない。
本当にガスが危ない状態に置くというのは賛否両論あると思うけれど、
危険なガスマネージメントをずっと行い続けるよりはよほどリスクが少ないと考えている。
で、今回の講習では水深45mでエア切れを起こした(という想定の)バディと一緒に、船の下まで戻って、6mに浮上するまで(酸素にスイッチするまで)を実際にやってもらった。
固定された船から最も離れていて、一番深い場所でのエア切れ。減圧(Deco)も必要な状態。
極めて緊急事態に近いシナリオだ。
(非常に危険なので、テクニカルダイビングのインストラクターの管理下以外で絶対に実践しないで下さい)
ガス切れとなった時点での残圧(=今回の、引き返す予定の残圧と同じ)が120bar。
120bar残っていれば余裕だと、直感的に感じるかもしれない。
さて、ガスシェアをして戻り始める。
横向きの流れが強く、ガスシェアに集中している一人は、流されていることに気づかない。
もう一人が伝えようとするが上手くコミュニケーションが取れない。
一人は早めのスピードで浮上しようとする。
もう一人はゆっくりと浮上しようとしていて、ここでもコミュニケーションがすれ違う。
これらは普段はコミュニケーションが取れていることなのに、ガスシェアをしながら地面の無い中層に居るとなると中々伝わらない。
ようやく水深21mまで浮上できた時点で60bar。
そこから減圧停止をしながら上がっていく。
最後に6mまで来て、ガスシェアを終えた時点での残圧が30barを少し割った程度。
水深45mで手間取ったり、途中でもうワンミス重なると、残圧がゼロになりかねない数字だ。
予定の残圧から10bar多く使うことがどれほど危険か、とても実感を持って分かっていただけたと思う。
賛否両論ある内容だとは思うが、非常に身になったのではないか…。