Column

テクニカルダイビングコラム

08.16

ダイビング中のポジショニング(オープンウォーター)

テクニカルダイビングでは、お互いのポジショニングが重要

テクニカルダイビングではダイバーどうしのポジショニングが非常に重要視されます。

テクニカルダイビングにおいては、各ダイバーはバディではなくチームであり、ましてや引率者とそれについていく人ではありませんから、各人にトラブルがあったときにお互いに1.すぐに気づくことができ、2.すぐに助けられる ポジショニングを取ることが必要です。

ここで重要なのは、「お互いに」という点です。
私を含めてインストラクター上がりのテクニカルダイバーは、どうしても「自分以外を見やすい位置」に移動し、「自分が見られやすい位置」に移動することをおろそかにする傾向があります。
例えば、相手より1mほど浅い位置にいればチーム全体を俯瞰して見渡すことができます。しかしながら、人間の視野角は寝そべってトリムを取った姿勢では下向き~前方方向にありますから、自分以外のチームメンバーからは自分のことが見えません。

ではどうすればよいかというと、オープンウォーター(オーバーヘッド環境以外)での基本的な考え方は、

  1. 頭を横に動かすだけで全員が視野に入る位置にいること
  2. 一呼吸で他のダイバーに届く距離にいること
  3. 可能なら、頭を動かさなくても全員が視野に入る位置にいること

この三つです。

チームはどのポジションが良い、ということは色んな方が色んな意見を持っていますが、私としては上記3点を満たしていればそれ以上は好みの範疇であると考えています。
(※「どれが正しい」ということよりも、ダイビング前にチームでどのポジションを誰が取るかということについては話し合い、合意を形成していることが重要です。”俺の考えている最強のポジションにみんなが合わせてくれなかったから、皆はテクニカルダイビングのことが分かっていない!遅れている!”のような姿勢こそ唾棄すべきと思います。)

では上記のポジションはどのような位置なのかということを考えましょう。
まず、1を達成するためにはレクリエーショナルダイビングのような縦に並んだポジションはご法度です。
先頭のダイバーのフィンの横、可能ならほぼ真横が望ましいです。

ポジショニングの参考例

この位置関係であれば、先頭のダイバーも、体を動かさずに斜め後ろを見るだけで他のダイバーを確認することができます。
また、先頭の人が、後ろ側のダイバーのライトの光を見て、近くにいることを判断できます。
※テクニカルダイビングでは、スポットライトで先頭の人の視野の前を照らし、着いてきていることを伝え続けます。

2の“一呼吸で他のダイバーに届く距離”というのは、もちろんサポートを行える/受けられる距離ということですね。体が当たるほど近いのは問題ですが、遠すぎるとトラブルに即座に対応することができません。
どの距離が適切かということについてですが、濁りが少ない海であれば人ひとり~ふたりぐらいが左右の間に入れるぐらいでしょう。1~2mぐらいでしょうか。
トラブルに気づいてサポートを行うことが目的のポジショニングなわけですから、2m離れると見えなくなるような場合ではもちろんもっと近づくべきでしょう。

3の“頭を動かさなくても全員が視野に入る位置”というのは、泳いでいるときではなく、潜降や浮上、作業などで同じ位置に止まっているときのことを言っています。
例えば3人であれば(そして流れが無ければ)、三角形の頂点にそれぞれが居て向き合っているようなポジショニングを取ります。
このポジショニングであれば、自分以外の二人を同時に視野に入れることができます。

ここでは原則を説明しましたが、基本の考え方を理解しておくことで、こう習った!というだけではなく、実際の現場で臨機応変さが求められるような場合に自分がどう動けばよいかが見えてくるでしょう。